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インターカルチュラル・シティ:活躍する外国人市民インタビュー【髙橋仁さん】

日本に魅了されて30年~母国ブラジルと日本をつなぐ架け橋に~

Fale Japones CEO 髙橋仁さん

今回お話を伺ったのは、イタリアのベネチアカーニバルの仮装で使われることで知られる「ベネチアンマスク」を制作している美術家・シェフ・日本語教師・通訳と4つの肩書を持ち世界で活躍している日系ブラジル人の髙橋仁さんです。これまでの芸術活動や浜松の印象や魅力などについて伺いました。  (聞き手:三井 忍)

~来日したきっかけを教えてください

19歳の時、ブラジルに自分の家を建てたくて出稼ぎのために来日しました。2年間、日本で働いて一度ブラジルに帰国しましたが、日本の風土や文化、日本人の礼儀正しさが忘れられず、帰国後わずか2ケ月で日本に戻ってきてしまいました。31年間日本で暮らしていますが、日本文化の知識や伝統を肌で感じ、日本の魅力をより多くの方に知ってほしい、そんな思いから母国ブラジルをはじめ、世界中の方にインターネットを通して伝える活動をしています。大好きな日本に対しての僕なりの恩返しです。

~浜松の印象について聞かせてください

18年前、浜松に移住してきましたが、海も山も川もあり自然豊かで素晴らしい土地だと思います。芸術活動をする上でインスピレーションはとても大事です。来日後、神奈川(横浜)、群馬(伊勢崎)、長野、山梨などいろいろな場所で生活しましたが、浜松は外国人にオープンな部分もあって、全てにおいて一番です。

~浜松に住み始めてから驚いたことがあるそうですね

一番驚いたのがポルトガル語の通訳がたくさんいることでした。市役所や大きな病院、企業など、日本語が話せなくても暮らしていける環境が整っています。僕が来日してはじめて住んだ場所が横浜市。当時は通訳がいない環境でしたから病院に行くのもひと苦労でした。全国的に見ても浜松はブラジル人が暮らしやすい街だと思う反面、環境が整いすぎていると逆に僕は心配しています。言葉は、相手を理解するはじめの一歩です。日本語が話せないブラジル人は日本文化に溶け込むことができず、相手を深く理解することができません。自分が体感しているからこそ、日本語が話せないまま暮らしているブラジル人が多い今の状況は、このままではいけないと感じています。

~日本をよく理解しているからこそ、日本語の大切さをブラジル人に教える活動をしているそうですね

実用的な日本語に特化した内容の授業を行っています。文法を学ぶことはとても大切だと思っていますが、自分が困っていることを相手に伝える手段や病院やスーパーで使う言葉など、生活に直結している言葉を最初に習得できるプログラムです。19歳で来日したときは日本語が全く分かりませんでした。同僚などに教えてもらいながら1年で日常会話をマスターしました。そんな僕の経験の詰まった日本語学習メソッドです。

通訳、日本語教師としても活躍されている髙橋さん。日本でただ一人、本格的にイタリアのベネチアンマスクを作る美術家でもあります。次はベネチアンマスクについてお話を伺います

日本の和紙やちりめんを使いオリジナルのベネチアンマスクを製作

オリジナルの和風ベネチアンマスク

~ベネチアンマスクとはどういったものでしょうか

17世紀からヨーロッパでは喜劇の衣装の小道具として使われています。日本のものに例えると「能面」が一番近いでしょうか。喜劇ではそれぞれキャラクターによってマスクの型が決まっていて、一般的には世界3大カーニバルのひとつ、ベネチアカーニバルで使われている事が多いです。

~ベネチアンマスクを学ぶきっかけを教えてください

幼い頃から演劇が好きで、自らも演じる機会がありました。次第に舞台衣装にも興味が湧き、14歳のころに受けたワークショップで、職人からマスク作りの基礎を学びました。人の顔を石膏で取った型を使い、紙を何層も貼り付けて制作。アクリル絵の具などで色付けし、羽やリボン、宝飾などの装飾を行い、完成させます。1つの作品をつくるのに1ヶ月以上かかります。

世界初の赤ちゃん用ベネチアンマスク

~14歳からずっとマスクを作り続けているのでしょうか

実は、マスク作りから離れていた時期もありました。パートナーが仮面舞踏会に出る際にマスクを頼まれた事をきっかけに再開しました。子どもの頃の情熱がよみがえってきた感覚でした。

~実際にベネチアの職人を訪ねたそうですね

ベネチアは観光地で有名です。年々、伝統技法でベネチアンマスクを作る職人が減ってきていると聞きました。お土産用に安価なプラスチック製のベネチアンマスクが大量に売られるようになり、マスクを作る職人たちは落胆していました。また、若者のベネチア離れが進み、後継者不足に悩んでいると相談を受けました。日本に住みながらベネチアンマスクを作り続けている僕に何かできることはないかと思い、インターネットを使ってベネチアンマスク作りの動画の公開をはじめました。技術を伝え、世界中でベネチアンマスクを作る愛好家が増えてほしいという願いと、本物の良さを知ってほしいというベネチア職人の気持ちもこもっています。

伝統的なベネチアンマスク

~髙橋さんのマスクには日本の優れた素材を使っていると聞きました

身に着ける人のことを考えて肌に当たる内側の部分は日本の和紙を使っています。肌なじみがよく、長時間つけていても痛くなりにくいのが特徴です。マスク周りの飾りは、日本伝統文化のちりめんを使うなど、オリジナル作品もたくさんあります。重たそうに見えるマスクですが、実は非常に軽量に作られています。わずか34 gのものもあります。活動が認められ、映画や舞台CMなど、オファーをいただく機会が増えました。残念ながら一般販売はしていませんが、ベネチアンマスクの美しさを多くの方に知ってもらえると嬉しいです。

(取材時期:2022年6月)

今後の活躍も楽しみにしています。本日はありがとうございました。

髙橋仁(Takahashi Jin)

ブラジル・サンパウロ州出身。幼少から舞台に憧れ自らも演技の道に。演劇で使うマスクに興味を持ち職人の指導を受けベネチアンマスクを作る美術家に。シェフ・日本語教師・通訳と4つの肩書をもちマルチに活躍している。