• 浜松市多文化共生センター
  • 浜松市外国人学習支援センター
  • 浜松国際交流協会
LANGUAGE

「ひらがなめがね」をつかって、このウェブサイトにふりがなをつけることができます。

ふりがなをつける

※外部サービスに移動するため一部の機能が使えなくなります

浜松市多文化共生センター 浜松市外国人学習支援センター 浜松国際交流協会
HOME > 組織概要 > 視察・インターンについて > 浜松市の多文化共生施策について > インターカルチュラル・シティ(ICC)について > インターカルチュラル・シティ:活躍する外国人市民インタビュー:Vol.14  介護福祉士 グェン・ティ・ビック・チャンさん

インターカルチュラル・シティ:活躍する外国人市民インタビュー:Vol.14  介護福祉士 グェン・ティ・ビック・チャンさん

介護士は私の天職
いつか日本の素晴らしい介護システムをベトナムに

ベトナムの自然豊かな土地で育ったチャンさん。両親の職業が教師という家庭でしたが、当時のベトナムの教師は低賃金のため給料だけでは生活が難しく、駄菓子屋の副業をしながらチャンさんを育ててくれたそうです。小さい頃から駄菓子屋の手伝いや畑仕事をして両親を助けてきたチャンさん。高校まで村で過ごし、大学は親元を離れホーチミンにあるホーチミン大学に進学しました。ホーチミンに日本の企業が多数あることから日系企業に就職を考えていたチャンさんは大学で「日本学科」を専攻し日本の国について学び、日本を知れば知るほど日本が好きになり日本で働いてみたいという思いが強くなったそうです。日本語もマスターし通訳として来日したのが2014年。その後、日本の短期大学を経て、通訳の道から介護の道へと転換しました。現在は介護の仕事をしながら浜松在住のベトナム人のための介護予防サロンを開催しています。前半はベトナム時代の話や来日のきっかけなどについて伺いました。

チャンさんの生まれ故郷のビン・ディンはどんなところでしたか

海も川も山もあり自然豊かな田舎です。電気が通ったのは、私が小学校2年生の頃でした。当時、テレビ番組で人気だったのが日本のドラマ「おしん」でした。今でもお手伝いさんのことを「おしん」というほどベトナムで幅広い世代に受け入れられていたドラマだったことを覚えています。

ご両親が教師だったそうですね

教師というと日本ではお給料だけで生活できる職業だと思いますが、ベトナムの当時の教師のお給料では家族4人が生活するのはとても大変でした。食べる野菜を畑で育て、副業として学校の近くに駄菓子屋を経営していました。小さい頃からお手伝いをすることが大好きで両親の助けになればと思い店頭に立ちました。

高校3年生のころ、家畜の餌を畑で収穫しました

日本に興味を持ちだしたのは何歳くらいですか

高校まで地元で過ごしました。姉からのアドバイスで大学進学を決めました。ホーチミンは日系の会社が多く進出していましたので将来的に日系企業に勤められたらと思いホーチミン大学の日本学科に進いました。ドラマの「おしん」でしか日本のことをよく知りませんでしたが、大学で日本という国自体の勉強をして日本を色んな角度から知り、知れば知るほど日本に興味が湧きました。

どんなところに興味を持ちましたか

日本人は礼儀正しくて時間をしっかり守ります。そして仕事もしっかりやるところです。日本が経済発展しているのも国民性が大きく関わっていることがよく分かります。それから、日本は四季がありそれぞれの季節で同じ場所でも違った風景を見ることができます。伝統文化も大切にしていてお祭りごとなど老若男女みんなで楽しんで良い文化を継承しています。

来日のきっかけと転職について聞かせてください

ホーチミン大学を卒業し、ベトナムの縫製工場に就職し通訳として働いていました。2014年に来日し、三重県で技能実習の通訳として2年間働きました。上司からは高い評価をいただいていましたが、私自身は通訳としてしっかり仕事ができているのかと納得がいかない状況でした。周りからの評価が高くても、仕事に達成感がありませんでした。仕事を通して何を学べるかが大切だと考えるようになりました。ふとテレビを見ていたら訪問介護の番組が放送されていました。テレビに映っていたおばあちゃんの笑顔が強い印象に残りました。介護を勉強すれば将来両親の介護に役立つと思い転職を考えました。三重県の特別養護老人ホームでのボランティア活動を通して本当にやりたい仕事は介護職だと実感しました。

介護を本格的に勉強するために2016年に静岡県立大学短期大学部に入学し介護福祉士の資格を取得したチャンさん。卒業後は浜松で介護職に就きました。介護の仕事を通して日本人のことをより近くに感じ、通訳として働いていた頃感じていた孤独感が薄れていったそうです。入所者に自分が助けられていると実感し日々充実しているそうです。そして浜松はベトナム人の数がブラジル人に続く第2位でとても多く、ベトナム人コミュニティもしっかりしているところも心強いと話します。自分の知識を活かし、介護生活にならないためのアドバイスなどベトナム人向けに定期的にサロンも開いています。後半は介護の仕事と今後について伺います。

介護の仕事はいかがですか

介護の仕事は大変だと思われがちですが、個人的には大変だと思ったことがあまりなく、自分らしく仕事ができていると思います。通訳の仕事をしている時は日本の文化や日本人にあまりなじめなかった気がして孤独を感じた時もありました。現在は認知症の方のお世話をさせていただいていますが、表も裏もないため素の人間同士の交流ができていると思います。介護の仕事を通して自分も成長していくことができ、勉強することがたくさんあるためやりがいがあります。

介護施設で働くチャンさん

浜松に住んでいるベトナム人のために介護予防サロンを開いているそうですね

浜松はベトナム人が多く、コミュニティもしっかりしているため、日本語をあまり理解していなくても住むことが可能です。日本語が分からないことで介護制度やその他で困っている人も多くいると感じています。介護予防と情報提供の場をつくれたらと思い浜松市西区大久保町にあるベトナムのお寺をお借りして月に1回サロンを開設しています。現在3回サロンを開催し、介護のお世話にならないために今から自分でできる予防法や体操、体を整える方法、日本文化など、大学の先生やその道のスペシャリストの方にご協力をいただき開講しています。参加するごとにポイントがたまるようになっていて、たまったポイントは社会福祉活動に寄付できる仕組みになっています。自ら健康になり、参加したポイントは他の方を幸せにするために使われるシステムですので、みんなにとってハッピーな仕組みになっています。定期的に開催し、浜松に住むベトナム人が健康でいつまでも元気で暮らせるよう願っています。

サロンで受講者と一緒に健康体操
サロンにて説明するチャンさん

これからについて聞かせてください

現在ベトナムではお金を持っている人しか良い介護サービスを受けることができません。介護を必要としているすべてのベトナム人が適切な介護を受けられるようなシステムを構築し、みんなが笑顔で幸せに暮らせるような社会にしていきたいと思います。日本とベトナムを行き来して、介護を必要としている人たちのために働きたいと思っています。介護で大切なことは「その人の尊厳を守ること」です。最後まで高齢者が自分らしくいられるよう介護士としてお手伝いをしていきたいと思います。

2022年ベトナム帰省時に家族と記念撮影

今後の活躍も楽しみにしています。本日はありがとうございました。

(取材時期:2023年12月)

グェン・ティ・ビック・チャン
1989年11月21日生まれ
ベトナム ビン ディン出身
2014年通訳として来日
2018年静岡県立大学短期大学部卒業 介護福祉士資格を取得
2019年より浜松の介護施設で働きながら在住ベトナム人のための介護予防サロンを定期的に開き、介護を受けないための健康管理法などを提供している